牛の屠殺死体を火あぶりにしたものを喰らおうと焼肉屋に行ったのさ。
ロースもハラミもコブクロ(小渕と黒田ではない)も大好きな俺だが、モーストフェイバリットなのはレバ刺なのだ。もちろんつけダレは胡麻油+塩。あの赤紫の肝臓をタレにつけてペロリといただく。最高じゃないか。タレのついたごはんもわしゃわしゃ食べる。これまた最高。
だから焼肉屋に入店する前にはメニューを凝視してレバ刺の有無を確認する。
メニューにレバ刺のない焼肉屋は地獄に落ちればいいと思っている。
その日ももちろん入店前にレバ刺チェック(専門用語でレバチェといいます)をした。レバ刺900円。ちゃんと書いてある。しかしこのご時勢、油断は禁物だ。「しバ刺」とか「レベ刺」といった偽物を食べさせられる恐れもある。いまや食の安全神話は崩壊し、自分の身は自分で守らなければいけない聖飢魔II的状況。22世紀まであと93年しかない。そんな危機感を忘れずにメニューを再度読む。レ・バ・サ・シ。よし、大丈夫だろう。突撃だ。アムロ行きまーす!
着席するとおしぼりが出てきた。うむ、苦しゅうないぞ。飲み物を頼めと言ってきたのでビールを頼む。そして、この空白の一日ともいえるエアポケット的時間を有効活用すべく、オーダーを検討する。ロース、ハラミ、ハツ、コブクロ(歌わないほう)、タンはやめておこう、高いから。ナムル、わかめスープ、ライス(大)、そして…(ゴクリ)
ビール到着。しかしこんなビールだか発泡酒だかわからない琥珀色の液体など眼中にない。イマドキの言い方をすればアウトオブ眼中だ。俺は先ほどの脳内検討会議の結果を発表する。そして最後にアレをオーダーした。すると店員は「すいません、レバ刺は切らしてまして…」と暴言を吐いた。
レバサシワキラシテオリマシテ…
レバサシワキラシテオリマシテ…
レバサシワキラシテオリマシテ…
あ、じゃあもういいです。全部キャンセル。帰る。
え、このビールの金を払え?飲んでないけどまあいいや、払ってやるよ。
お前らのような羊頭狗肉な店なんて二度と来るもんか。潰れてしまえ!
……なんて言えるはずもなく食事を継続。せめてもの慰めににユッケを頼んだ。
しかし、それでは満足できなかった。やはり俺の心の中にはアイツがいるんだ。
ユッケすまない。俺、自分には嘘つけねえよ。
いいの、アタシ気付いてた。凡ちゃん、アタシといてもどこかうわの空だったし。
すまねえ、いい男見つけてくれ。じゃあな。
レバ刺が確実に食べられる店はないものか。