大学時代の友人が福島にいるので、会いに行くことにした。
せっかくだから温泉で酒でも飲みながら語らおうじゃないか!ということで
土湯温泉に行くことにした。
出発前日、ネットで路線検索をしてみる。それによると郡山まで新幹線を使わずに行くと……ご、ごじかん?5時間も電車に乗ってられない。新幹線利用を心に決める。それでも少しは節約しようと大宮まで在来線で向かう。
新幹線で食べる駅弁に旅情を感じつつ(単純)ビールを飲む。
すると眠気が…。
気付くと郡山だった。慌てて降りる。車内にゴミ置き去りだったけど許してね。
待ち合わせの場所に現れたのは、体重が増加し生え際が後退した友人だった。
「よー。久しぶり!元気だった?」などと言いながらも『デブったのはともかく、ハゲについて触れていいものなのか?』という疑問が俺の頭に去来する。
久々の再会でいきなりハゲについて言わなくても…とも思うが、ここまでハゲてると触れないのも不自然じゃないか?とも思う。
こういう「やる」「やらない」で迷ったとき、俺は「やる」を選ぶタイプだ。
「師匠、最前線が後退してますよ」
ドキドキドキドキドキ。果たして彼のリアクションは…?
「勤務が不規則でさー。ハゲるし太るし。新聞記者なんてなるんじゃなかったよー」
こうして郡山温泉ツアーはスリリングに幕を開けたのでした。
土湯温泉行きのバスはどんどん人里離れた方へひた走っていく。外は真っ暗。
2人しか乗っていない薄明るいバスの車内でいろんなことを話す。お互いの仕事のこと、就職活動のこと、学生生活のこと、友達の近況などなど。
どのくらい話していたのか分からないが、バスは土湯温泉に到着した。
えらい山奥ではないか。雪も積もってるし。
るるぶによると「1日5組限定」と「ゆっくり露天風呂に浸かれます」がウリの宿。
部屋に入り浴衣に着替えようとすると「大きな浴衣(青)」と「普通の浴衣(赤)」の2着が用意されていた。(今思えば、これがヒント1だった)
デブった友人に大きいほうを譲り、さっそく露天風呂へ向かう。
あれ、男湯も女湯もないよ?もしかして混浴?(喜)
この宿は貸切露天風呂だったのだ。5つの露天風呂に5組の宿泊客がそれぞれ入る仕組み。まあ貸切なら気兼ねしなくていいや。と思って2人でのんびり入っていた。(これがヒント2だった)貸切は確かにゆっくり風呂に浸かれて良い。
丁寧に髪を洗う友人の姿が印象的だった。
食事は寿司食べ放題だった。シースー最高!
山奥で寿司なんて海原雄山だったら激怒するところだろうが、グルメじゃない2人は舌鼓を打ちまくっていた。
満腹になり、酒も入り、トークも最高潮。本当に楽しい夜だった。
宿泊客の中でそんな夜を過ごしたのは俺たちだけだったのだが、そのときの俺たちには知る由もなかった。
翌朝、寝癖ボサボサで食堂へ行くと、他の宿泊客はすでに食事に入っていた。
そして、そこで俺たちは衝撃の光景を目にするのであった。
他の宿泊客、すべてカップル!
そうか、そういうことかリリン!
そりゃ浴衣もデフォルトで男用と女用が準備してあるよな。
そりゃ貸切露天風呂だよな。男同士で入ってる場合じゃないよな。
夜だって違った意味でお楽しみだったんだよな。
言葉少なに朝食を済ませる2人。
もしかして、そういうカップルに見えているのだろうか。
部屋に戻って顔を見合わせる2人。「手をつないで帰ろうか」などと言って大笑い。
しかし、どこか寂しかったのは否めないのであった。