韓国戦の後、メディアはイチローに「(勝利した)韓国にあって(敗北した)日本になかったものはなんでしょう」と質問した。これに対してイチローは「何でしょうね、思い当たらない」と答えた。メディアは「意気込み」や「気迫」といった答えを期待していたのだろうが、イチローは思い通りの「敗戦の弁」を答えてくれなかった。だってみんな一生懸命やっていたから。自分から「意気込みが足りませんでした」なんて答えるわけがない。
健闘したものの日本代表は敗れ、準決勝進出の望みは絶たれたかのようにみえた。アメリカがメキシコに敗れればあるいは…という可能性もあるにはあったが、敗退がほぼ決定(延長13回で3対0で勝つことが条件)してしまったのでディズニーワールドに遊びに行ってしまったメキシコがアメリカに勝つはずがないと思った人が大半だろう。
ところがアメリカまさかの敗北。これによって日本が準決勝に進出することになった。準決勝進出に燃えるアメリカとディズニーワールドで遊んでいたメキシコ。どちらが「意気込み」や「気迫」を持って試合に臨んだかは言わずもがなだ。冒頭に掲げたメディアの質問がいかに馬鹿げていたかよくわかる。「韓国にあって日本になかったもの」は時の運だ。「意気込み」や「気迫」だけで勝てるのなら誰も苦労しない。もちろんそれはとても大事だ。だからといって負けたほうがその点で劣っていたとするのは実に短絡的だ。
それにしてもドラマチックだなー。誤審で勝ち越しをフイにされた上にサヨナラ負け。背水の陣で臨んだメキシコ戦での勝利。最後の相手はアジアラウンドで一度敗北を喫した韓国代表。激闘の末に惜敗。韓国代表はマウンドに国旗を立てたりしちゃって、まさに「屈辱的」な敗退。「まだ可能性はある!」なんてメディア報道を「可能性はあるけど、限りなくゼロに近いじゃん。望みを持たせる言い方するなよ」と思っていたら、大どんでん返しで準決勝進出。「スポーツは筋書きのないドラマ」とはよく言ったもので、まさに劇的な展開。禍福は糾える縄の如し。
あと2つで世界一。がんばれ日本代表。そんな悲壮感ただよう顔しないで、野球を楽しんでください。