不戦敗 |
2007.04.28 Saturday 02:39 |
本やCDの貸し借りをしたり、ご飯を一緒に食べに行ったり、酒を飲みながらいろんな話をしたり。傍目にも仲が良く映っていたらしく「付き合ってるの?」と聞かれることもしばしば。
仲良くなればなるほどその関係を失うことが怖くなり、恋愛感情を表に出しにくくなるというのはよくある話。でもそれでもよかった。話していると相手に彼氏がいないことは分かっていたから。お互いの腹を探りあうような会話も楽しかったので、あせらずじっくりと流れを見極めようと思っていた。
月に最低1度は必ず一緒にご飯を食べようと決めていたのに、何かと仕事が忙しく「なかなか行けないね」なんて話をしていたから安心していた。向こうも残念がっているんだなと思っていた。
そんなある日、彼氏ができたという話を他の人から聞いてしまった。これはけっこう効いた。本人もその場にいたので「おー、おめでとさんです」なんて言いながら心中穏やかではなかった。「好き」「付き合ってください」とハッキリ言葉にしてくれたのがきっかけで付き合うようになったとのこと。つまり俺の戦略は完全に裏目に出たということで…。いや、戦略なんてかっこいいものじゃないな。単に臆病だっただけだ。
その時は、それでもまだ逆転のチャンスはあると思っていた。まだロスタイムがあるぜ。仕切りなおしだ。……と思っていたら、ロスタイムは意外と短かった。「聞いてほしいことがあるんだけど」と持ちかけられたときは「別れたのか?別れそうなのか?」と期待してしまった。
久しぶりに2人で食べるご飯。黒い期待を抱える俺の耳に聞こえてきたのはゲームセットの笛だった。「結婚することになった」と彼女は言った。「凡さんには一番先に言おうと思って。彼氏ができたときも言おうとしたんだけど、なんだか言いにくくて」
こういう言葉もついつい自分に都合よく解釈したくなるけど、そこを抑えて「全部俺ひとりで勝手に盛り上がってただけだ」と思うことにした。実際、告白したわけでもなく、何をしたわけでもないのだ。トンビに油揚げを攫われた気になっているけど、もともと俺の油揚げではないのだ。
そうは言いながらも、最近なんだか虚脱感ありあり。相手の懐に飛び込まなかったわりには重いパンチを貰ったようで、少しグロッキー気味です。戦いのリングに上がろうとしなかった臆病者にはいい薬…なのかな。